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成年後見制度とは

成年後見制度とは知的障がい等判断能力が不十分な人の保護(財産管理や身上監護)を、成年後見人等が行う制度です。

成年後見制度には、家庭裁判所が成年後見人等を選任する「法定後見」と、本人の判断力が十分なうちに任意後見人と受任契約を結び、判断能力が不十分な状況になったときに備える「任意後見」があります。

法定後見の場合には判断能力の程度に応じて「後見」「保佐」「補助」に区分されています。


成年後見制度とは1〜成年後見制度の理念

2000年4月の民法改正により、新成年後見制度がスタートしました。従来の禁治産・準禁治産制度では、家産の保護という側面が強かったのに比べて@自己決定権の尊重、A残存能力の活用、Bノーマライゼーションという新しい理念のもとに、本人らしい生活をおくれるように、また、利用しやすい制度となるように改正が行われたものです。その理念を表すものとして、民法858条が規定され、本人の意思尊重と身上配慮義務を定めています。

本人らしい生活の確保のためには本人の意思が尊重されることは当然ですが、その配慮の範囲も生活の維持、福祉サービス利用契約、住居、医療に関する事項など生活支援全般に及ぶことになります。

また、社会福祉法の改正、介護保険、支援費制度の導入などにより、福祉サービスが契約に基づくものへと転換しました。このような契約を結ぶにあたり意思能力に問題がある方には、成年後見および地域福祉権利擁護事業による補完が不可欠です。社会福祉における成年後見制度の位置づけなども考えていく必要があります。

ただ現実には、この理念通りに運用されているとは言いがたい状況も存在し、さらに判断が困難な諸種の問題も発生しています。理念を生かした成年後見運用のため、さまざまな分野の専門家の集まりである当センター「トムテ」の特質をどのように活かしていくことができるのかを考えていきたいと思います。

成年後見制度とは2〜居住用不動産と夫婦間贈与

A氏は50代の男性で、事故の後遺症で記憶力・判断力が低下しています。所持金全てをパチンコにつぎ込んでしまう、といった浪費傾向もあり、平成17年に長男が保佐人に就任しました。A氏は土地建物を所有しており、A氏は家族とともにそこに居住しています。家族は、A氏が自宅を担保に借金をしたりしないか不安を感じており、妻との婚姻期間も20年を超えていることから夫婦間贈与をしたい、というのが今回の相談内容です。

夫婦間贈与と毎年の贈与の特例を合わせると2110万円までは贈与税が免除になり(不動産取得税は別途課税される可能性はある)、本件はその範囲内と思われるので、もし贈与ができれば家族にとってはひと安心でしょう。
もちろん、本人が贈与についてOKすることが必要です。また、不動産の処分は保佐人の同意を必要とする事項でもあります。これらをクリアしたとしても、最大の問題は、居住用不動産については裁判所の許可が必要な点です(民法876条ノ5、859条ノ3)。果たして裁判所の許可は下りるでしょうか。

裁判所はどういう場合に許可すべきかは法律には書いてありませんし、判例も見当たらないようです。こういう場合には、成年後見とはなんのための制度か、またなぜ特に居住用建物の譲渡についてのみ許可が必要とされたか、というところから考えるしかありません。

従来の禁治産・準禁治産制度では、家産の保護という側面が強かったのに比べて、成年後見制度は、@自己決定権の尊重、A残存能力の活用、Bノーマライゼーション(障害を持っていても健常者と均等に当たり前に生活できるような社会こそがノーマルな社会であるという考え方)であるという新しい理念のもとに、本人らしい生活をおくれるようにする、というのが基本理念であるとされています。 自己決定権の尊重という面からみれば、本人が本当に贈与の意味をよく理解してるのであれば許可が下りるようにも思えます。

しかし、特に居住用不動産の処分にのみ許可を必要としたのはなぜでしょうか。本人の残存能力活用、ノーマライゼーションという面から見れば、居住用不動産というのは特別な意味をもちます。そこにずっと住んでいて慣れ親しんだ家であれば住みやすく、残存能力活用、ノーマライゼーションに大いに資すると考えられるからです。また、住んだことがなくても、住む家があるのは大切でしょう。こう考えると、居住用不動産の処分は原則許されず、許可されるのはよほど特別な場合に限られるように思います。例えば、本人が入院してしまって退院の見込みは全くなく、入院費用を出すため家の処分が必要な場合などです。

このように考えてみると、夫婦間贈与はA氏の財産を妻にあげるだけですから、A氏の利益にはなりません。もちろん、妻子でその後A氏の面倒を見るつもりなのでしょうが、それと贈与することとは無関係です。逆に、贈与を受けたはいいが、その後離婚してA氏は見捨てられてしまうかもしれません(もちろんA氏と一緒に来所した妻子がそのようなことを考えているようには見えませんでしたが)。裁判所から見れば、贈与した後どうなるかは予測できないわけで、やはり、本人の利益になるとは考えがたく、許可が下りるような特別な場合にあたるとは考えられません。

ということで、夫婦間贈与はできず、本人が実際に借金をしてしまったらその借り入れを取り消すしかない旨お答えしました。聞いた時にはには、家族のために何とかしてあげたいと思ったのですが、成年後見制度の趣旨から常に振り返ってみることが大事だと思わされた相談でした。

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